遺言
相続の基礎知識ー遺言の種類
遺言とは、一定の方式に従った遺言者の死後の法律関係を定める最終の意思を表したものです。つまり、遺言をしておくことによって、自分の死後の 自分の財産について、誰に何を相続させるか、自由に決めることができるわけです。 なお、遺言では財産に関すること以外にも遺言で定めることができますが、遺言の内容に法律効果をもたらすことができることは、法律で決まっていま す(遺言事項、例えば、遺言で『認知』をすること)。 このほか、遺言は遺言者ごとに作成しなければならず、夫婦共同で遺言するということは認められません。 さらに、遺言は文字で残すことを原則とし、後日の改変が可能なビデオテープや録音テープなどは認められていません。
遺言の種類には、次の通り、まず大きく普通方式の遺言と、特別方式の遺言に分けられます。 1.普通方式の遺言
● 自筆証書遺言
● 公正証書遺言
● 秘密証書遺言
2.特別方式
● 死亡危急者の遺言
● 伝染病隔離者の遺言
● 在船者の遺言
● 船舶遭難者の遺言
ここでは、より身近な普通方式の遺言についてまとめます。
★自筆証書遺言
本人が、本文の全文・日付・氏名を自筆で書いた書面に捺印したものです。用紙は何でも構いませんが、ワープロ文字や代筆は認められず、必ず全部を
自分で書くことが必要です。なお、相続法の改正により、相続財産の目録については自筆でなくてもよくなりました。この場合、目録ごとのページに署名・押
印をする必要があります。改正点の細かい部分についてはご相談ください。
★公正証書遺言
公正証書遺言は、次の方式に従って作成される遺言です。
①証人2人の立ち合いが必要です。 ②遺言者が遺言の内容を公証人に伝えます。 ③公証人が②の内容を筆記し、この内容を遺言者と証人に読み聞かせたり、または閲覧をさせます。 ④遺言者と証人が、公証人の筆記の正確なことを承認した後、各自がこれに署名し押印します。ただし、遺言者が署名できない場合は、公証人が事由を付記 して、署名に代えることができます。 ⑤最後に公証人が①~④までの方式に従って作ったものであることを書き加えて、これに署名押印をします。
もし、遺言者本人が言葉の不自由な人や耳の不自由な人の場合は、本人の意思を伝えることのできる通訳を介して遺言を作成することができます。 なお、相続人になる可能性のある人(推定相続人)、直系血族、未成年者、受遺者などは、公証人役場での証人になることはできません。
★秘密証書遺言
秘密証書遺言は、次の方式に従って作成される遺言です。
①遺言者が遺言書を作成し、これに署名・押印します。 ②遺言者がその証書を封して、証書に押印したのと同じ印鑑でこれに封印します。 ③遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出し、自分の遺言である旨を告げ、住所氏名を述べます。 ④公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の述べたことを封紙に記入した後、遺言者及び証人ともにこれに署名押印します。
これで完成です。なお、秘密証書遺言は、公正証書遺言と同じように公証役場で作成しますが、公証人が内容を確認できないところが相違点です。 自筆証書遺言と秘密証書遺言は、作成時点でその内容を本人以外に知られることがなく、プライバシーを守ることができますが、本人の死後に家庭裁判所で検 認の手続きが必要となります。ちなみに、検認とは、遺言書について、その状態を確証し、後日における偽造又は変造を防止するため、家庭裁判所に確認して もらうことをいいます。検認の必要がないのは、公正証書遺言の場合だけです。